しっかり計画を立てて、充実した旅行を楽しむ事に異論はありませんが、若い頃の無計画な行き当たりばったりの旅も楽しいものです。今回はそんな話、今から40年くらい前の事です。
地図を眺めていて、本州から出っ張った能登半島に注目すると、半島の北、かなり沖にある舳倉島(へぐらじま)と読む島が目に留まりました。どんなところだろうと想像するうちに、行ってみようという事になり、さっそく出発しました。
今でこそ、北陸新幹線で金沢まではあっという間ですが、当時の事、青春18きっぷでのローカルな旅しか考えておりませんでした。従い、結構時間のかかる長旅となりました。長野から直江津へ北上、糸魚川、魚津、富山と日本海に沿って西へ向かいました。金沢まで行って、能登半島へ向かう始発列車に乗る予定でしたが、折り返しの時間がもったいないので、手前の津幡と言う駅で能登方面の列車を捕まえる事にしました。津幡は分岐点となる要所なので、小さいながらも人の往来が多く活気がありました。確か駅舎の近くに立ち食い蕎麦屋さんがあって、プラスチックの容器に入れてもらい、待ち時間で駅のベンチにて蕎麦を頂きました。とても美味しかったことを覚えています。
乗り換えた列車はかなり混雑していましたが、途中の七尾や和倉温泉でかなりの人が降りて行きました。乗車時間はかなり長く感じましたし、穴水に到着したときは夜も深まっていましたが、ここからさらに北上して、宿のある輪島まで行かなければなりません。列車の旅は続きます。
(現在、穴水から輪島へ向かう鉄道は廃線となりました。)
輪島に到着したときは夜10時を回っていたと思います。しかし、宿のおかみさんは歓迎して下さいました。入浴後すぐに爆睡です。
翌朝は晴天でした。早々に朝食を済ませ、出発です。チェックアウトの際、夫婦箸をプレゼントされました。輪島塗です。(家内と2人旅でしたので)とても嬉しかったです。
輪島の朝市は有名ですね。通りには露店がずらりと並び、にぎわっておりました。大通りを抜け漁港の方へ向かい、舳倉島へ向かう船を見つけ乗り込みました。船便が限られているので、復路の便と合わせ滞在時間を計算しました。
船上では日差しが強く、照り返しがきつかったですね。しかし真っ青な海をしぶきをあげて軽快に進む船は大変気持ちがいいものです。トビウオが数十匹、船の速度の合わせるように、船のまわりを繰り返し飛び跳ねる姿を見ましたが、その飛行時間の長さには驚かされました。一回飛び跳ねると7秒くらいは宙を舞っていたと思います。
途中、七ツ島と言うところを通過しました。漁場なのか、多くの船を見かけました。泳いでいる人もいたと思います。しかしそこから先は、もう他の船は見当たらず、私たちの船は速度を上げて北に向かい突き進みます。海の青さもさらに色合いが深まってきました。
ようやく舳倉島が見えてきました。陸地が見えると安心した気分になります。小さな漁港に船がつけられ上陸です。建物が数十件しか見当たらない港。食堂が1件、古めかしい郵便ポストと公衆電話。とにかく90分ほどの滞在時間です。島を一回りしました。学校がありましたが、休日のせいか無人です。聞いたところによると、この島は夏場しか人がおらず、冬は無人島になるそうです。民家は漁港周辺に集まり、島の裏手は何もありませんでした。海水浴もやってみましたが、岩がごつごつしていて、泳げるような作りになっておらず、危険そうなので即やめました。しかし眺めは素晴らしかったです。視界の先に人工物は無く、誰一人いません。波が寄せる音だけの、ある意味静寂の世界。何もない事の潔さ。貴重な体験でした。
良い一日を!
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