ちょうど5年前の5月の話になります。その日は久しぶりに仕事が早めに片付きましたので、買い物がてら新宿経由で帰ろうと丸の内線に乗りました。車内は帰宅時間で大混雑。地下鉄の車窓は自分の顔が写るだけなので、つり革に捕まりながら退屈しのぎにスマホを眺めておりました。やがて四谷三丁目を発車。さて、まもなく下車駅と網棚を見上げると自分のカバンが無いことに気づきました。
焦りました。盗難?現金は?クレジットカード!個人情報漏洩!一瞬様々な事を考えましたが、四谷三丁目で下車した年配の男性がいた事、その人が自分と同じようなかばんを持っていた事、その持っていたらしきカバンが網棚にある事を認識し、とっさにそのカバンを持って次の駅で下車、四谷三丁目に戻り駅員に事情を説明しました。
交番の方が話が早いでしょう、という事で地上に出て交番で事情を話すと、警官立会いのもと、カバンの中身を拝見する事になりました。書類の中からケイタイの番号を記したメモが出てきたので、すぐさま電話して頂きました。
すると電話口から、カバンが違うとあわてている様子が伝わってきました。という事で数分後に現れた紳士は、私のカバンを手にして、申し訳ないを繰り返しながら交番に入ってきました。
お互いのカバンの中身を確認し、問題が無い事が分かると、「拾得物扱いにすると面倒ですから」、と苦笑いの警官に促され、何事もなかったかのように交番を後にしました。
すると、このままじゃ申し訳ないと、その紳士に近くの酒処へ案内され、その後およそ2時間の酒宴となったのです。山形県の産物をメインにしたお店でなかなかいい雰囲気でした。同県には銘酒<出羽桜>があり、久しぶりに美味しい日本酒を堪能させて頂くことができました。地位のある方でしたので、驚くと同時に堅い話に終始し話題に事欠くかと思いましたが、知識も豊富な話好きの同氏に救われました。名刺交換をして素性が分かると、安堵した様子で、僕は運がいい、と繰り返し仰っていました。
皆様も忘れ物や盗難にはご注意を。
良い一日を!
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