30年くらい前に、私は横浜の港で3年ほど働いていたことがありました。その時の話題です。
皆さんは、シーメンズクラブをご存じですか？ 船乗りが利用する施設で、見知らぬ国の港に船が停泊し、陸に上がった船員たちが不自由しないよう生活に必要な環境を提供する場です。一般の方も入れました。今でも営業しているのかなぁ。
横浜の本牧にもその施設があり、何度か立ち寄って食事をしたりしたことがありました。施設内はどこか外国を思わせるような独特な雰囲気で、壁には日の丸が掲げられ、WELCOMEと書かれた垂れ幕が下がっていました。お客さんを見ると、日本人に交じって、国籍がわからないような人たちが飲んだり話してたり。電化製品に見入っている人、ビリヤードに熱中する外国人などなど。私は、テレビを見ながら、ミラービールを片手にハンバーグステーキを食べるのが好きでした。支払いの時に「お支払いは円ですか？ドルですか？」とよく尋ねられました。
その日、私は仕事帰りで山下ふ頭の方へ歩き始めたそのときです。体格のいいアラブ系らしき男たち数人に取り囲まれました。驚いて身構えると、その１人が私にやさしく尋ねてきました。
「シーメンズクラブはどこですか？」私はすぐに彼等が船乗りであることに気づきました。ようこそ日本へ。さっそく案内しました。彼等はチュニジア人で彼等の船は横浜で一晩停泊。長い航海の後、久しぶりに陸へ上がったのだそうです。道々彼等は、私にいろいろな質問を浴びせました。何の仕事をしているのか？自動車を安く買う事はできるか？などなど。私はチュニジアという国がよくわからなかったので尋ねてみると、温暖な気候で一年中海で泳げること、魚やフルーツがうまいことなどなど。なかなかいいところじゃないか！
目的地に到着すると、道案内をした私に、彼等は握手を求めてきました。
しっかり全員と握手をしました。楽しい夜を。そしてその後の長い航海を、どうかご無事で。
良い一日を！
コメント